shipper備忘録。プラスα

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「バースデー」安西リカ

凄く久々に、読み終わった瞬間から読み返したくなる本でした。

バースデー (ディアプラス文庫)

バースデー (ディアプラス文庫)

 

 

深夜三時に起きて長官を配達し、古いアパートに帰って少し眠り、鉢植えの世話をする。友人も作らずもう六年、百合原はこんな毎日を続けていた。あるとき集金先のマンションで、越してきたばかりの滝本という男と出会う。滝本は百合原の顔を見た途端、言葉をなくすほど驚いていた。実は百合原はかつて事件を起こし、その間の意識がない。そして滝本には十年前に姿を消した忘れられない恋人がいたようなのだが……?

 

 安西さん、「初恋ドローイング」を本誌で読んだ時からずっと好きなのですが、今回はもうすごく、何度も読み返したいお話でした。

BLでは受はとかく様々な不幸に襲われがちで百合原も例外ではありません。何せ両親は失踪したまま生死不明。身寄りもいない。おまけに記憶もあいまい。一つ所に落ち着いて生活が出来ないし、友達と呼べる人間もいない。

滝本は滝本であまり幸福とは言えず、物質的に恵まれていただけマシなんだろうけど、性格がねじ曲がってしまったのも屈折した性癖を抱えたのも納得の窮屈な法曹一族。

そんな二人が細い細い糸を手繰り寄せて新聞配達員と顧客という形で出会う。昔に比べれば新聞を取っている世帯は減っているので多少受け持ちのエリアは広いかもしれないが、朝1~2時間で配れるほどのエリア。そんな狭いところに二人が辿り着くまでの出来事を思うと本当に泣けてきます。

 

昔、まだ私が学生の頃、「24人のビリーミリガン」という本が長らく平台に置かれていました。あの頃はダニエルキイスが流行っていたっていうのもありますが電車の中吊り広告でも見かけたような記憶があります。

最近では、復帰した森友嵐士氏がT-BOLANの「マリア」について語る番組なんかもありましたし実際壮絶な、物語のように幸せなエンドマークがつく事はあまりないのかもしれません。BLではあまり見かけないテーマですし最後までハラハラしてしまいました。

あまりネタバレしたくないのでふわっとした事しか言えませんが、百合原の過去を思うと辛いけどタイトルが「バースデー」なので希望を持って最後まで読んでほしいです。読後に人生に負けずに生きていこうって思えます。

描き下ろしSSもじんわりと良いお話でした。

幸せって大層なものをゴテゴテ飾り付けなくてもいいんだな、って思わせてくれます。

東尾先生とか、津田さんの娘さんとかとの食事会のお話とか同人誌で読みたいです。