shipper備忘録。プラスα

BL本や映画のレビューなど。モバイル機器や競馬も好きなのでそういう話題もあるかと思います。

「弦巻先生の作家生活」tacocasi

季節の変わり目で温度変化が激しいですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。 私はというとスギ花粉のピークが過ぎ、あとはヒノキ花粉が落ち着いてくれるとマスク生活ともおさらばです。詳しいアレルギー検査はした事がないのですが、夏も秋も河川敷なんかに行くと鼻がムズムズするので他の花粉症もきっとあるんだろうなぁー野球少年じゃなくて良かったなと思う日々です。

さて、今日は初めて読む漫画家さんの作品を紹介したいと思います。

弦巻先生の作家生活 (マーブルコミックス)

弦巻先生の作家生活 (マーブルコミックス)

 

 

昔から人の縁に薄い​青年・槇大吾は、ある日「俺の仕事を手伝わないか」と見知らぬ男に声をかけられる。
怪しげだが美しいその男の正体は、人間界の文士に憧れ、めでたく小説家デビューを果たしたばかりの鬼・イチイであった!
公の場に姿を現すことのできないイチイの影武者として“作家・弦巻先生"を務めるべく​、​​​イチイと隷属契約をし​、​ともに暮らし始めた槇だったが?!

 

 人間界で小説家になりたくて執筆活動を続け、無事作家になるも鬼のままでは担当と打ち合わせも出来ないので影武者にと槇をスカウトするイチイ。イチイにはもれなく従者の煤竹がついてきて、煤竹の人間界での姿はフェレット、というなんとも珍妙な、でもほのぼのとしたBLでした。

隷属契約した槇には既に他の妖の者がついていて、それによってイチイも影響を受けてしまい、回避する術はないかと右往左往、イチイの弟(イチイより能力が強い)が出てきて二人を引き離したりとドラマチックな展開が待っています。

イチイが作家を目指したきっかけは大昔に出会った人間なのですが、その人物も二人の恋愛模様に大いに関係していて、突飛な展開ではありませんが面白かったです。

そのものズバリのシーンはありませんが世界観には合っているんじゃないかな。おとぎ話みたいな余韻を味わえました。かわいいお話が好きな人にはオススメです。

あと個人的に煤竹の人型が地味すぎて好きでした。

新作を、続編を楽しみにしていました。

先日、剛しいらさんが亡くなられました。

普段作家さんのSNSはほとんどフォローしていないので亡くなってから半月ほど知らずにいました。

インターネット上の噂で闘病中らしいというのは聞きかじっていましたが、まさかこんなに早く訃報に接するとは思いもよらず、職業柄若くして亡くなる方も多いとはいえ、しばし茫然としてしまいました。

とは言え、正直残された著作の数を思えば、私が読んだ冊数などほんの一握りで語るほどの思い出を持ち合わせている訳でもなくブログに取り上げるかどうか悩んだのですが、全く触れないのも不自然かなと書くことにしました。

 

電子書籍を読むようになってBLジャンル以外の本も気軽に買えるようになり一昨年くらいに剛さんの「恋愛事件捜査係 担当官は恋愛オンチ」を読みました。

剛さんのBLは数冊読んだことがあってBL以外だとどんな感じなのかなと様子見のつもりで買ってみたところ、これが面白くて

「あーこれは是非シリーズ化してほしい!」

と思っていたのですが、結局、これが最後の新刊だったようで。

寂しいですね。

訃報を聞いてこれを読みかえして、

百日の騎士 (リンクスロマンス)

百日の騎士 (リンクスロマンス)

 

 積んだままだったこれを読みました。

猫を愛でる犬 (ショコラ文庫)

猫を愛でる犬 (ショコラ文庫)

 

 他にも積んである既刊が何冊かあるので大切に読もうと思います。

 

何年かBLジャンルから離れている間に東城麻美さんが亡くなったり、桜海さんが亡くなっていたりというのもショックでしたが、皆様お体大事にしてほしいです。

ジャンル初期から活躍されている方たちはアラ還という方も少なくないと思いますし、それでなくとも女性特有の疾患などが40代、50代と色々現れたりもするでしょうしベテラン作家さんたちを(例え好みに合わない作品を書いていたとしても)「老害」などという言葉で粗末に片づけたくありません。

長く活躍されている方には敬意を表したいです。

「MR-ミスター-」由良環

皐月賞も終わりまして戸崎が初クラシックを獲りましたね。1番人気が勝つのはまれだというデータもあったので馬券としてはサンリヴァルからワイドを流していたら無事ジェネラーレウーノとのワイドをとりましたが、パンパンの良馬場で見てみたかったです。

また間が開いてしまいましたが皆様いかがお過ごしでしょうか。

今日は電子限定のこちらをご紹介したいと思います。

renta.papy.co.jp

kindle楽天にはありませんが各電子書籍で取り扱い中の「MR」単話売りの全3巻です。50ページ弱が3本で、”伝説のマスター”と呼ばれるゲイモテを極めたようなキャラクターのミスターが主人公の、SMがテーマのお話です。

男子上等!レーベルから出ていますが絵柄の感じから見ると最近描かれたものではなく、恐らく由良さんがJUNEで描かれていた頃、20年以上前の作品ではないかなと思われます。(初出を探したのですが見つかりませんでした)

舞台はアメリカのハードゲイ社会なのでBLとはかけ離れているように見えますが、2話目のダリルのお話なんかはもっと膨らませて今どきの絵柄であれば現在のボーイズラブ読者にも受けそうな切なくも美しいお話でした。

経験がないのでよく解かりませんが、恋人を無くすのとはまた違った悲哀があるのだろうなと想像するとその後のミスターの心持ちは如何に……。それが1話でのボトム達への扱いに繋がるのでしょうね。

拘束、局部へのピアス、フィスト、リバと色々あってそれでこの絵柄なので万人受けするとは思っていませんが、機会があれば読んでほしい作品です。

 

由良さんは小野双葉という別ペンネームもお持ちで、そちらでのホラー漫画の方が有名かと思いますが、私が最初に見かけたのはJUNEに載っていた短編の「ブラザー」だったように記憶しています。しかし25年くらい前の話なのでいかんせん記憶があいまいです。JUNEにはビデオレポート(主に海外のゲイもの)も定期的に掲載されていたのでそっちだったかもしれませんが、とにかくこちらのジャンルではほとんど日本人を題材にされていません。(当時としては珍しくない。むしろ明るく楽しくかわいい学園モノの方が異端だった)

25年ほど前の日本ではまだまだゲイはホモだおかまだと呼ばれイロモノ、というよりゲテモノ扱いで人権なんてあったもんじゃないという空気が濃厚だったので「MR」のようなテイストの作品を描かれていたのかなと思うのですが(差別的な笑いを取りに行かないゲイコミックの方向というか)、当初はBL専門の作家がいなかったのでこういうシリアス路線を描くレディコミ系の作家さんは割と多かった記憶があります。

「麗人」なんかは創刊当時レディコミ作家が半分くらいだったんじゃないかな。東城麻美さんや魔木子さんもその流れですね。

でも私が知る限り由良環さんほど濃い絵柄の濃いSMゲイものを描かれていた方はいないので、由良さんの作品が読めればもう読めないものはないんじゃないでしょうか。

上級者向けです。

狐が主役のボーイズラブ小説

雑食傾向にあるので避けているカップリングや設定というのは殆どないのですが何となく似た設定のものを続けて読んでしまう事があります。

オメガバースが続いたり年下攻が続いたりなどその時によって色々ですが、もふもふは多く刊行されているにしても最近読んだ小説が立て続けにキツネものだったのでちょっと取り上げてみたいと思います。

まずは1月の新刊の鳥谷さんの「紅狐の初恋草紙

紅狐の初恋草子 (ディアプラス文庫)

紅狐の初恋草子 (ディアプラス文庫)

 

 強い力を持っていた呪術師の叔父の家を引き継いだ(呪術師としては全く能力のない)翻訳家の千明と、千明に召喚された妖狐の紅葉with子猫の猫宮のお話です。叔父が亡くなった後も妖力が濃く残っており、家の廊下が伸び縮みしたり、猫が喋れるようになったりとがっつりファンタジーですが、鳥谷さんらしくエロ面白かったです。

これでも鳥谷さんの攻キャラの中では大分変態度は低いなと思うんですが(紅葉は変な美辞麗句を並びたてて千明の秘所を讃えたりしないので)よくこんな普通のタイトルになったなーっていう、エロいシーンへの突飛さ! 毎度の事ながら本当に面白いです。ラノベだったら絶対千明が紅葉の上に降ってきてしまったシーンを端的に表した露骨なタイトルになってただろうなー。良いのか悪いのか、タイトルも表紙絵も手に取りやすくなっています。BLとしては良いギャップでしょうか。

そして鳥谷さんの書く小さい獣はいつも元気いっぱいであざと可愛いです。

 

続いては2月の新刊、小中さんの「狐宝 授かりました

狐宝 授かりました【特別版】(イラスト付き) (CROSS NOVELS)

狐宝 授かりました【特別版】(イラスト付き) (CROSS NOVELS)

 

 天涯孤独の和喜と、子作りのために人間界に紛れていた男(雄?)しかいない妖狐一族の千寿のお話。

なんと妖狐と交わると男でも妊娠するという設定です。最近はオメガバースも隆盛だし「男が妊娠する」と聞いてもあまり驚きもなく受け止めていますが、なかなかのパワーワードですよね。

小中さんの書くお話は「攻→より強い攻と出会って受にジョブチェンジ」系が多くてそこがとても好きだったのですが、このお話は最初から攻と受がはっきりしています。役割固定の方がスタンダードだとは思いますが(当て馬がスピンオフで主役になる場合は除く)ちょっと寂しい。

攻キャラの妖狐は大体スーパー攻様ですねー。和喜は命の危険にさらされたりもしますが千寿の力で事なきを得、無事「狐宝」に恵まれます。3人もいてかわいい。

 

こちらも同じく2月の新刊で、安曇さんの「こんこんキツネのお嫁入り

こんこんキツネのお嫁入り (幻冬舎ルチル文庫)

こんこんキツネのお嫁入り (幻冬舎ルチル文庫)

 

 狐の半妖の温が大雨の山の中で小説家の紳太郎に助けられる事から物語は始まります。三作のなかでは唯一、狐が受です。

訳あって両親の顔も知らず、半妖とは言え戸籍もないので学校にも行けず人間界の常識に疎く年齢よりも幼い温は、紳太郎に出会わなければこの先さぞかし生きづらかったろうなと思うと「半妖の狐の男の子が人間の男性に嫁入り」という冷静に考えればこちらもなかなかのパワーワードにも関わらずしんみりした気持ちになります。

お話としては半妖の温と、仲良しのウサギの三兄弟、親代わりに温を見守るイヌワシの妖、人里離れた山中の一軒家で暮らす紳太郎と、童話のような雰囲気で起承転結もわかりやすいし、小説を読みつけない人でも取っつきやすいかなと思います。甘々です。

 

……しかし、どれもなんだか疑似家族ものでもありますね。やっぱり売れ筋なんでしょうか。私は好きですが、BLというジャンルならではの萌えは十人十色、色んな設定のお話があるという強みが薄くなってしまうのはジャンルの衰退に繋がるのでは、と少し心配でもあります。

 

こういう狐(もふもふ)プラス疑似家族ものの代表的な小説といえばこちらでしょうか。

狐の婿取り【特別版】 (CROSS NOVELS)

狐の婿取り【特別版】 (CROSS NOVELS)

 

シリーズが既に8作刊行されていて、その他に番外編もある人気作です。勿論全部読んでいます。

主人公二人のベッドシーンが8作にもなるとちょっとワンパターンではありますが、毎回ドタバタと楽しく、みずかねさんの挿絵がまた最高です。みずかねさんはそもそも絵が上手い方ですが、子供を描くのがとっっっても上手いので乳児も4歳児も見事な描き分けで、こういった家族BLや子持ちBLには欠かせない絵師さんですよね。文章で「何歳だ」という記述がなくても何歳の子供か解るっていうのは本当にすばらしいの一言です。

……挿絵についてばかり言及してしまいましたが、お話としても面白いです。何千年も前から狐神として生きる琥珀は現代の服装や話し言葉に染まらないし、本宮の九尾の白狐様のお茶目さ、陽を溺愛する残念美人の月草様など、キャラ設定がしっかりしているのでシリーズを続けて読めば読むほど楽しめること請け合いです。陽ちゃんのツリーハウスのエピソードなんかBLとは一切関係ないですが、とても好きなエピソードでたぶんシリーズ中で一番読み返してるんじゃないかと思います。

 

今回ブログを書くにあたって

「狐の出てくるBL作品って他にどんなのあったかなー」

と思い返してみたのですが、これだけ流行っているにも関わらず漫画ではほとんどありませんでした。おそらく作画が難しいんだろうなと推測しますが、漫画と小説で意外と相違点があるのだなと思いました。

逆にオメガバースは漫画では多いですが小説ではあまり見かけませんね。まぁ文字だけだともふもふプラス疑似家族ものとの住み分けが難しいのかもしれませんね。

「ばらのアーチをくぐってきてね」三田織

毎日暑いので早くも衣替えの必要性に迫られておりますが皆様いかがお過ごしでしょうか。4月に入ったばかりですが私が住む埼玉北部では既に桜が散っております。桜花賞前に桜が散っているのは少し寂しいですね。

さて、今日は「山田と少年」の番外編をご紹介したいと思います。

amazonでは見つからなかったので楽天から。

電子書籍版が販売されていますが、初出は同人誌みたいですね。同人誌の電子化ほんとありがたいです。

内容的には本編終了後の二人の話で、受験中の短い逢瀬や大学入学後の交際の様子などが描かれています。本編では出来立てほやほや初々しいところで終わっていたので、少し時間の経過した二人にひたすら幸せな気持ちを貰える、ページ数の少なさとは裏腹に満足感たっぷりな短編集となっておりました。一編は5ページ~せいぜい20ページ弱しかありませんがこういう交際してからの日常を補完してくれるのはありがたいです。

タイトルがまた、良いですね。本当にばらのアーチをくぐる二人を夢想するだけでもまだまだ楽しめます。

これも本編の、少年こと千尋の友人への恋慕とかゲイであることへの葛藤とかそういうものを乗り越えた先にあるからこそなんだろうなと思うと「山田と少年」がいっそう愛しく感じます。

「小説道場」中島梓

寒暖差にやられ風邪を引き、一週間ほど寝込んでいまして少し間が空いてしまいました。皆様お元気でしょうか。今年は花粉症もなかなかヘビーで、風邪との合わせ技で鼻呼吸が出来ず病院の待合室で窒素するかと思いました。

 

そんな中読破したのがこちらです。

新版・小説道場1

新版・小説道場1

 

 懐かしの「小説道場」ご隠居編までの5冊を一気読み。

ボーイズラブというジャンル名がつく前から同ジャンルを愛してやまない者にはお馴染みの雑誌「JUNE」誌上で1984年から1995年までの約10年間連載されていた、投稿作品の批評コーナーをまとめたものです。

「JUNE」という雑誌は小説や漫画の多くは素人の投稿作でした。少ない資金で運営する為など色々理由はあったのかもしれませんが、まだジャンルが確立されていないので当然専業の作家などいるはずもなく、著者の中島梓さんに至っては数種類のペンネームを駆使し何作も作品を執筆し誌面を埋めたりなさっていたという事です。

そして腐女子(こういう概念も言葉もなかったけど)の中島氏は思うわけですね。

自分以外の人が書いた小説が読みたい

と。

これはもう当然ですね。

そんな中島氏のリビドーと編集部の依頼で始まった小説道場はなんと10年間の永きに渡り連載され数多くのBL作家を生み出しました。

「門弟」と呼ばれていた投稿者の中で今も現役で書いている方は少ないですが、現役で代表的な方は秋月こおさん、柏枝真郷さん、佐々木禎子さんなどでしょうか。名倉和希さんも城田みつきのPNで投稿されていたようですね。

今回私が読んだ「新版」では中島氏の批評のみで作品はごく一部を除いて掲載されていないので、当時の空気を知る私でもちょっと退屈してしまうかなーと思ったのですが、杞憂に終わりました。

1巻の最初の頃は基本的な人称などの説明から、どういう心持ちで小説に向き合うかなど執筆をする上で必要なHOW TOなども門弟の質問に答える形で都度説明されていたりして、今読んでも十分に通じる内容で面白かったです。

当時は主に小JUNE(小説JUNE。小説キャラとか小説ディアプラスと同じサイズの雑誌)を買っていて小説道場が連載されていた大JUNE(一般的な漫画雑誌と同じB5判サイズ。漫画や舞台レポ、映画レポのカラーグラビア多め)はあまり買った事がなかったのでもっと厳しい批評をされていた記憶だったのですが、改めて読んでみると絶賛している作品も幾つもありますし、文章の改善点を挙げたり、作品の出来が向上したら本気で喜んでいる様子だったりと、なんていうか愛に溢れていました。しかも今以上にニッチで趣味的な世界にいるという事に中島氏も門弟さんも自覚的だったろうなというのが窺えて、それでも毎月のように何百枚もの、それこそ、そのまま書き下ろし単行本になるくらいのページ数を書いて投稿している門弟さんにも、合計すると月に千枚以上の投稿作品を読んでいる中島氏にも正直圧倒されてしまいました。

上に挙げた方たちの他に単行本デビューやその後プロになった主な門弟さんは石原郁子さん、江森備さん、布刈丸洋子さん、野村史子さん、尾鮭あけみさん、須和雪里さん、鹿住槇さん、金丸マキさん、榎田尤利さん、佐藤ラカンさん等。PNを変えてデビューなさった方もいらっしゃるでしょうし全てではありませんが、それでもこれだけの人数がプロになっているというのは凄いですよね。

だってあの頃、そもそも専業でボーイズラブを書いて食べていけるなどと誰が想像したでしょうか?ボーイズラブなんて言葉が出来るとも思っていなかったし、「JUNE」以外に専門の漫画誌、小説誌が出るなんぞ夢にも思ってなかったに違いありません。

 

ちなみに当時、既に存在は知っていて恐る恐る書店でチラ見した事があった雑誌「JUNE」を私が初めて購入したのは、須和雪里さんの「いつか地球が海になる日」が掲載されていた小説JUNE1992年2月号でした。小説道場でいうと3巻収録の第48回で取り上げられていて、中島氏が「泣いた」と評されているお話しです。私も涙しながら読んだ記憶がありますが、手元に残していないので、今読むとどんな感想になるのかなと興味深いです。須和さん、好きだったなー。

KDPででもいいから補完出来るようになると嬉しいのですが今のところ小説道場登場作品の殆どが(全集も含めて)古本でしか手に入らない状況が少し歯がゆいですね。まぁ当時は単行本が出るなんぞ思っていないので気に入った作品は切り抜いて保管しておくっていうのが常識だったんですよね。

私が読み始めた頃は既に吉原さんの「幼馴染み」が伝説的存在になっていて(二次創作の同人誌も出ていたし)バックナンバーを探しても全然見つからなくて、ルビー文庫から出版された時は

「やっと読めるのか……!」

と感動に打ち震えたものでした。

今のBLももちろん楽しく読んでいます。単行本の真ん中辺りで恋心を自覚して残りのページ数が2割を切るころにはエッチしているというパターン化されているものを当たり前に享受してますけど、昔のJUNE作品にはあっと驚くような作品が多いですからね。特にバッドエンドやメリバエンド好きの人にはどストライクっていう作品も多いんだろうなと思います。

似て異なるものです、BLとJUNEは。

 

ところでこの「小説道場」、1995年に一度中島氏は外れるのですが、その後すこーしだけ復活しており、それが5巻目の「ご隠居編」にあたります。変わってしまったJUNE界隈を嘆いたり新しく出てきたBL漫画を楽しんだりされていますが、投稿作品には全く納得のいく出来のものがなかったようで早々にこのご隠居編は終了してしまいます。

安易に言葉を紡ぐな、と仰っていました。100巻以上の長編をものした作家さんの言葉は重いです。未完ですけど。

 

先日漫画ではありますが「おいちょっと誰かちゃんとチェックしてやれよ」という作品がありましたので最後にそちらをご紹介して終わりたいと思います。

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デュルド…なんと語感の悪い事か。

綴りは「Dildo」ですからね……。

作者が悪いんではないですよ。編集仕事しろ、ですよ。セリフなどで一部分だけ登場するならまだしもWebの単話売りコミックとはいえタイトルになっている訳ですから。

(中身を読んだわけではありませんので、もしかしてデュルドが新種の触手の名前か何かでしたら申し訳ありません)

 

あと最近の作家さんの「違和感を感じる」にも物申したいですが、またそれは別の機会に。

 

モテすぎて困ってしまうBL

たまたま続けて読んだ作品が、どちらもモテてすぎて生きづらい受のお話だったので思いつく作品を挙げてみようかなと思います。

 

今回読んだのはまずこちらです。

あなたのものにしてください (プラチナ文庫)

あなたのものにしてください (プラチナ文庫)

 

あれ、表紙画像ない。ま、いいか。イラストは秋吉しまさんです。はじめましてだと思うのですがこの方左利きかしら?表紙で二人とも右向きの顔って珍しい。

子供の頃に大人の男性にイタズラされて以来、男性恐怖症で男性に触られると過呼吸を起こしてしまう超絶美形な瑞希と、それを理解しプラトニックなお付き合いをしてくれる黒川のお話です。

イタズラされた過去から必要以上にゲイを毛嫌いするキャラクターというのは珍しくありませんが、ここまでの恐怖症を抱えるキャラクターは初めて読んだかもしれません。

流石にちょっと設定が力業かなと思います。夕映さんの筆力をもってしてもちょっと極端だよなと思ってしまいました。

でも黒川が徐々に外見だけでなく瑞希の内面にも惹かれ愛を育んでいく様はとても楽しく読めました。甘々です。

 

もう一つはこちら。

魔性の男と言われています (キャラ文庫)

魔性の男と言われています (キャラ文庫)

 

 どこをどう見ても平凡な容姿の名波だが昔から男にモテてモテていつもまわりで諍いが起きる。職場の上司がストーカーになってしまい、とうとう事件と呼ぶほどの大事になり職も金も家も失い世をはかなんで身投げしようとしたところを漆喰職人の比嘉に助けられる、というお話。

このお話は比嘉がとっても格好いいです。中原さんらしい魅力的なキャラクターでした。

周りのクラスメイトや同僚、はたまた取引先などが勝手に自分を巡る恋のライバルになって恋愛沙汰が起こるというのは辛いでしょうね。しかも名波は容姿が平凡だから相談しても信じてもらえないという所で二重に辛い。比嘉も最初は話半分だったのに、一緒に働くうちに名波の魔性たるゆえんを知るところになるのが面白かったです。

電子書籍で読んだのですが限定SSの幼児に惚れられてしまうお話も良かったです。BL的に将来有望。

 

どちらも男からモテすぎて辛いお話ですが、夕映さんのお話は瑞希が痛々しく、中原さんのお話は職人に囲まれて一生懸命に仕事をしている名波がいじらしく、というのが一番印象に残っています。

選ぶ仕事も男性がほとんどいない保育士と、人と関わる事が最低限の工場のライン仕事、とキャラクターが出ていて面白い。

 

BLは所詮恋愛がメインで幅が狭い世界と思われがちですが、作家さんの味付けによって全然味わいが変わってくるのが面白いですね。

 

その他に男にやたらモテるっていうと思い浮かぶのはこちらです。

 BL読者の方には説明不要の有名な作品かと思います。

モテモテですが、鈍感すぎて気づいていないので本人はあんまり困っていませんが、知賀が困っていますね。近藤君も巻き込まれて困っているだろうし、生徒会の面々は割と困らされています。

コミックスがここ数年出ておりませんが連載、どうなっているんでしょうか? 伏線を回収して頂いて、心置きなく国斉と知賀にイチャイチャしてほしいものです。

 

……色々思いめぐらせてみたのですが、モテモテなお話って意外と記憶に残っていませんでした。

たらこさんの「SEX PITOLS」とか近年流行りのオメガバースなんかも特定の種にモテモテなお話ではありますが、ちょっと違うしなー。

 

また思い出したら追加しようと思います。