shipper備忘録。プラスα

BL本や映画のレビューなど。モバイル機器や競馬も好きなのでそういう話題もあるかと思います。

狐が主役のボーイズラブ小説

雑食傾向にあるので避けているカップリングや設定というのは殆どないのですが何となく似た設定のものを続けて読んでしまう事があります。

オメガバースが続いたり年下攻が続いたりなどその時によって色々ですが、もふもふは多く刊行されているにしても最近読んだ小説が立て続けにキツネものだったのでちょっと取り上げてみたいと思います。

まずは1月の新刊の鳥谷さんの「紅狐の初恋草紙

紅狐の初恋草子 (ディアプラス文庫)

紅狐の初恋草子 (ディアプラス文庫)

 

 強い力を持っていた呪術師の叔父の家を引き継いだ(呪術師としては全く能力のない)翻訳家の千明と、千明に召喚された妖狐の紅葉with子猫の猫宮のお話です。叔父が亡くなった後も妖力が濃く残っており、家の廊下が伸び縮みしたり、猫が喋れるようになったりとがっつりファンタジーですが、鳥谷さんらしくエロ面白かったです。

これでも鳥谷さんの攻キャラの中では大分変態度は低いなと思うんですが(紅葉は変な美辞麗句を並びたてて千明の秘所を讃えたりしないので)よくこんな普通のタイトルになったなーっていう、エロいシーンへの突飛さ! 毎度の事ながら本当に面白いです。ラノベだったら絶対千明が紅葉の上に降ってきてしまったシーンを端的に表した露骨なタイトルになってただろうなー。良いのか悪いのか、タイトルも表紙絵も手に取りやすくなっています。BLとしては良いギャップでしょうか。

そして鳥谷さんの書く小さい獣はいつも元気いっぱいであざと可愛いです。

 

続いては2月の新刊、小中さんの「狐宝 授かりました

狐宝 授かりました【特別版】(イラスト付き) (CROSS NOVELS)

狐宝 授かりました【特別版】(イラスト付き) (CROSS NOVELS)

 

 天涯孤独の和喜と、子作りのために人間界に紛れていた男(雄?)しかいない妖狐一族の千寿のお話。

なんと妖狐と交わると男でも妊娠するという設定です。最近はオメガバースも隆盛だし「男が妊娠する」と聞いてもあまり驚きもなく受け止めていますが、なかなかのパワーワードですよね。

小中さんの書くお話は「攻→より強い攻と出会って受にジョブチェンジ」系が多くてそこがとても好きだったのですが、このお話は最初から攻と受がはっきりしています。役割固定の方がスタンダードだとは思いますが(当て馬がスピンオフで主役になる場合は除く)ちょっと寂しい。

攻キャラの妖狐は大体スーパー攻様ですねー。和喜は命の危険にさらされたりもしますが千寿の力で事なきを得、無事「狐宝」に恵まれます。3人もいてかわいい。

 

こちらも同じく2月の新刊で、安曇さんの「こんこんキツネのお嫁入り

こんこんキツネのお嫁入り (幻冬舎ルチル文庫)

こんこんキツネのお嫁入り (幻冬舎ルチル文庫)

 

 狐の半妖の温が大雨の山の中で小説家の紳太郎に助けられる事から物語は始まります。三作のなかでは唯一、狐が受です。

訳あって両親の顔も知らず、半妖とは言え戸籍もないので学校にも行けず人間界の常識に疎く年齢よりも幼い温は、紳太郎に出会わなければこの先さぞかし生きづらかったろうなと思うと「半妖の狐の男の子が人間の男性に嫁入り」という冷静に考えればこちらもなかなかのパワーワードにも関わらずしんみりした気持ちになります。

お話としては半妖の温と、仲良しのウサギの三兄弟、親代わりに温を見守るイヌワシの妖、人里離れた山中の一軒家で暮らす紳太郎と、童話のような雰囲気で起承転結もわかりやすいし、小説を読みつけない人でも取っつきやすいかなと思います。甘々です。

 

……しかし、どれもなんだか疑似家族ものでもありますね。やっぱり売れ筋なんでしょうか。私は好きですが、BLというジャンルならではの萌えは十人十色、色んな設定のお話があるという強みが薄くなってしまうのはジャンルの衰退に繋がるのでは、と少し心配でもあります。

 

こういう狐(もふもふ)プラス疑似家族ものの代表的な小説といえばこちらでしょうか。

狐の婿取り【特別版】 (CROSS NOVELS)

狐の婿取り【特別版】 (CROSS NOVELS)

 

シリーズが既に8作刊行されていて、その他に番外編もある人気作です。勿論全部読んでいます。

主人公二人のベッドシーンが8作にもなるとちょっとワンパターンではありますが、毎回ドタバタと楽しく、みずかねさんの挿絵がまた最高です。みずかねさんはそもそも絵が上手い方ですが、子供を描くのがとっっっても上手いので乳児も4歳児も見事な描き分けで、こういった家族BLや子持ちBLには欠かせない絵師さんですよね。文章で「何歳だ」という記述がなくても何歳の子供か解るっていうのは本当にすばらしいの一言です。

……挿絵についてばかり言及してしまいましたが、お話としても面白いです。何千年も前から狐神として生きる琥珀は現代の服装や話し言葉に染まらないし、本宮の九尾の白狐様のお茶目さ、陽を溺愛する残念美人の月草様など、キャラ設定がしっかりしているのでシリーズを続けて読めば読むほど楽しめること請け合いです。陽ちゃんのツリーハウスのエピソードなんかBLとは一切関係ないですが、とても好きなエピソードでたぶんシリーズ中で一番読み返してるんじゃないかと思います。

 

今回ブログを書くにあたって

「狐の出てくるBL作品って他にどんなのあったかなー」

と思い返してみたのですが、これだけ流行っているにも関わらず漫画ではほとんどありませんでした。おそらく作画が難しいんだろうなと推測しますが、漫画と小説で意外と相違点があるのだなと思いました。

逆にオメガバースは漫画では多いですが小説ではあまり見かけませんね。まぁ文字だけだともふもふプラス疑似家族ものとの住み分けが難しいのかもしれませんね。