「雛鳥は汐風にまどろむ」南月ゆう
私、子持ちBLがとても好きです。
表紙とタイトルで子持ちモノと分かるものはだいたいチェックしています。(2冊くらい買って合わないなと思った作家さんは除外したりもしますが)
最近は「子供ともふもふ出しておけば手堅い」と思われているのかやたらこの手の設定が多いですし、
「編集さんから子持ちモノを書いてくれと依頼された」
なんていう後書きも散見されます。
そういうやや乱発気味の状況なので、最近は「受(もしくは攻)が一人で子育てをしている」という一番肝の部分が力業というか必然性がないというか、無理やりな設定だなというのも多いんですよね。
今回の南月さんはそこら辺の設定がもうバッチリ!でした。
雛鳥は汐風にまどろむ【SS付き電子限定版】 (Charaコミックス)
- 作者: 南月ゆう
- 出版社/メーカー: 徳間書店(Chara)
- 発売日: 2018/02/16
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログを見る
事故で両親と姉を亡くし、小学生の甥・歩を引き取った勇一。海の見える街に引っ越して、二人きりで始める新生活――そこで出会ったのは、総菜屋を営む陵。同い年なのに自分の店を持ち、ご近所から慕われる人気者だ。すっかり常連となったある日、歩が喧嘩で家出してしまった!!「逃げずにちゃんと向き合え」陵は動揺する勇一を叱咤し、絆を取り戻させてくれる。ところがその瞳は、どこか寂し気で…!?
総菜屋店主×サラリーマン。
新しく暮らし始めた街でおいしい惣菜屋を見つける。
そこの店主が陵で、明るく人当りが良いが初手からぐいぐい接してきて少し戸惑う勇一。
同じ年な事もあり店主と常連よりは距離の近い関係を築いていくのかと勇一がぼんやり思っているところに陵の「バイ宣言」
……と、ここまでが一話です。
人物紹介と設定とラブのとっかかり、ここまでがきちんと収まっている連載第一話を読むといつも「上手だな。さすがプロだな」って思ってしまうんですけど、南月さんも超長編はなくとも連載ものが多い作家さんなのでやっぱり上手です。
甥っ子の歩の描かれ方も決して勇一と陵のオマケではなく、陵と歩の二人の間だけの絆もちゃんとあって読み応えがありました。
子供の頃に親の愛情をきちんともらえないまま育つと、一切の闇を抱えずまっすぐに大人になるのは難しいのかもな、という所で、こじらせている陵と健全な勇一はとても良い対比にもなっていますし、そのどちらもを見て育つ歩はどんな大人になるのかなーという未来への希望もあって。
子持ちBLと一口に言っても「ちみっこかわいい」だけで押し切る系統とは違い、「家族の話」だなぁという印象でした。
……と、ここで結ぶとラブはどこ行った?という話になると思うんですが、真面目に愛する気持ちを持ち続ける事を諦めていた陵が勇一の事は捨てられなかったんだな、というところがしんみり萌えます。
あと電子限定描き下ろしで陵がでっかい長男的な甘えを勇一にかましてるところがすごく良いです。
こちらもBookLive!で購入したので共通データです。
消しは一般的にホタルと呼ばれるヤツでした。結合部が光ってるかんじのヤツ。もしかしたら紙の本よりホタルが大きいとか違いはあるのかもしれませんが、何が描いてあるか解らないというような不都合はないと思います。